大分大学理工学部・大学院工学研究科

工学研究科の辻田萌さん(研究マネジメント機構・一二三研究室所属)が日本抗体学会第3回学術大会でポスター賞優秀賞を受賞

受賞

 工学研究科の辻田萌さん(研究マネジメント機構・一二三研究室所属)が、日本抗体学会第3回学術大会に於いて、ポスター賞優秀賞を受賞しました。

 受賞の対象となった発表は以下のとおりです。

 

発表題目:   抗原分解能を有するTrastuzumab(Catalytic-Trastuzumab)が示す各種新機能に関   

      する研究

著者:          辻田萌, 田口博明, 宇田泰三, 一二三恵美

発表日時:   20241210日(午前:口頭発表, 午後:ポスター発表)

発表場所:   仙台国際センター

 

 がんに対する抗体医薬品は、他の免疫系の力を借りるエフェクター作用(注1)で効果を示すものが多く、単独でがん細胞を殺傷する能力は有していません。このため、免疫能の低下した患者さんや、免疫系細胞が到達しにくい固形がんでは効果が出にくいという問題があります。一二三研究室では、抗体に抗原分解能を付与するための手法を開発したことから、この手法を抗体医薬品のTrastuzumab(医薬品名:ハーセプチン)に適用し、単独でがん細胞を殺傷することの出来る抗体医薬品への改変を試みました。Trastuzumabのターゲットは、乳がんの約30%で高発現しているHER2タンパク質で、Trastuzumab HER2高発現の転移性乳がんに対する抗体医薬品として開発されました。

 本研究では、変異導入によってHER2タンパク質分解能を有するTrastuzumab(Catalytic-Trastuzumab)への改変を試みました。作製したCatalytic-Trastuzumabは、Trastuzumabと同じようにHER2タンパク質を認識して結合することが出来、エフェクター作用を排除した条件で、HER2高発現の乳がん細胞株を強く傷害しました。傷害を受けたがん細胞では、Apoptosis(注2)マーカーが検出されており、従来の抗体医薬品とは異なるメカニズムで、直接、細胞死を誘導していることが確認されました。

 抗体学会では、上述の研究成果を受けて、TrastuzumabCatalytic-Trastuzumabに変えた手法や、研究背景にも注目が集まり、製薬会社や薬学関係者から多くの質問を受けました。これに適切な受け答えをしたことが受賞に繋がりました。

 なお、本学会では一般講演は全てポスター発表として募集され(169件)、ポスター賞は、155名の応募者から最優秀賞2名、優秀賞6名に授与されていいます。また、一般講演の中から7件に口頭発表の機会が与えられ、辻田さんは口頭発表にも選出されました(最年少)。

 

 

(注1)         エフェクタ--作用:抗体が結合した標的細胞を除去する作用で、免疫系のタンパク質(補体)や細胞(T細胞、NK細胞、マクロファージなど)がこれを担います。

(注2)          Apoptosis:壊死とは異なり、制御された細胞死のことを言います。ヒトでは、胎児期に見られる尾の消失や、手足の指の形成、あるいは重大な遺伝子異常をきたした細胞の除去などで見られる現象です。

 

関連論文

 

 

受賞者リスト:https://antibodysociety.jp/information/

  

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写真左:受賞した辻田萌さん      写真右:賞状

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