大分大学理工学部・大学院工学研究科

博士前期課程1年 松井勇樹さん(檜垣研究室)が2025年 繊維学会年次大会で優秀ポスター発表賞を受賞

受賞

本学大学院理工学研究科応用化学プログラム 博士前期課程1年の松井勇樹さん(檜垣研究室所属)が、2025年 繊維学会年次大会で優秀ポスター発表賞を受賞しました。

 

〇発表題目:双極子配向の異なる両ホスホコリン系ブロック共重合体水溶液のミクロ相分離

〇発表日時:2025612

〇著者:松井勇樹,江口康弘,檜垣勇次

 

 生体膜は単なる細胞質を隔てる物理的な境界ではなく、多様な生体機能を担う動的な構造体です。生体膜では内葉と外葉で異なる種類の脂質が偏って存在しており、その組成は状況に応じて常に変動しています。このような脂質組成の非対称性は、アポトーシスの認識、細胞シグナル伝達、膜の曲率制御などに関与しており、細胞の恒常性維持に不可欠とされています。つまり、生体膜は構成分子の配置を分子間相互作用に基づいて制御することによって、細胞機能の空間的・時間的制御を実現しており、識別・応答・生存といった生命活動において極めて重要な役割を果たしています。当研究室では、リン脂質の親水部である双性イオン構造が集積した双性イオン高分子の相分離現象を研究しており、両双性イオンブロック共重合体濃厚溶液における双性イオン特異的相互作用によるミクロ相分離と高分子濃度に応じた構造転移を見出しています1,2)。この水性分子集合体は、親水性高分子のみで構築される新規分子集合体として興味深く、その相分離機構や分子分画機能について研究を進めています。本研究では、双性イオンの双極子配向が非対称であるポリ(2-メタクリロイルオキシ)エチルホスホリルコリン(PMPC)とポリ(2-メタクリロイルオキシ)エチルイソプロピルコリンフォスフェート(PMCPiPr)という異種双性イオン高分子の相分離に誘導される新たな水性ミクロ相分離二相系を探求しました。その結果、PMPCPMCPiPrは極めて類似した化学構造であるにも関わらず、双極子配向の非対称性に起因して水/エタノール混合溶液系における凝集挙動が全く異なり、相分離が生じることを見出しました。さらに、PMPCPMCPiPrブロック共重合体濃厚溶液における周期性の高いナノメートルスケールの格子状秩序構造の形成を明らかにしました。この双極子配向の非対称性に起因する相分離現象は、新たな分子集合体形成機構として画期的であるとともに、細胞膜のリン脂質非対称分布との関連においても非常に興味深い現象です。本研究は、JSPS科研費 基盤研究B 「水性ミクロ相分離二相系高分子集積体の創成」 JP 22H02147JSPS科研費 挑戦的研究(萌芽) 「親水性高分子の水中相分離と親水性/親水性分画場への分子内包」 JP 24K21797、新学術領域研究(研究領域提案型)水圏機能材料:環境に調和・応答するマテリアル構築学の創成 「選択的水和による水圏メゾスコピック秩序構造」 JP22H04555の助成を受けたものです。(受賞対象発表件数:186件,受賞者数:14名)

 

檜垣研究室:https://yuhigakki.wixsite.com/mysite

新学術領域研究 水圏機能材料:https://www.aquatic-functional-materials.org/

 

関連論文

 

2025年 繊維学会年次大会優秀ポスター発表賞受賞者リスト:

https://www.fiber.or.jp/jpn/awards/prizePoster.html

  賞状.jpg   受賞者.jpg

      賞状     左から辻井敬亘繊維学会会長、松井勇樹さん、檜垣勇次准教授

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