大分大学理工学部・大学院工学研究科

学部4年生 木村圭吾さん(檜垣研究室)が第53回繊維学会夏季セミナーで優秀発表賞を受賞しました。

受賞

 本学理工学部共創理工学科応用化学コース 学部4年生の木村圭吾さん(檜垣研究室所属)が、第53回繊維学会夏季セミナーで優秀発表賞を受賞しました。

  〇発表題目:ポリオキサゾリン/ポリスルホベタイン水性二相系の相分離挙動

  〇発表日時:202594

  〇著者:木村圭吾,城井陽菜,檜垣勇次



 液ー液相分離により細胞質内に発生する生体高分子濃縮液滴の生命化学プロセス制御における重要性の認知に喚起され,高分子液滴の形成/崩壊の制御により自在に分画場を作り出す分子システムが注目されています。高分子水溶液の液ー液相分離研究の歴史は古く、これまでに数多くの研究がなされてきましたが、その多くは非イオン性高分子の相分離と異種高分子電解質の静電相互作用による複合体(コンプレックスコアセルベート)を対象とする研究に限られていました。当研究室では,リン脂質の親水部である双性イオン構造が集積した双性イオン高分子の相分離現象を研究しており,両双性イオンブロック共重合体濃厚溶液における双性イオン特異的相互作用によるミクロ相分離と高分子濃度に応じた構造転移を見出しています1-3)。本研究では,非水溶性双性イオン高分子であるポリスルホべタイン(PSB4)と,25℃以下で水溶性であり25℃以上で非水溶性となる感温性高分子であるPoly(2-propyl-2-oxazoline) (PPrOx)の混合水溶液で形成される複合相分離液滴を研究しました。その結果,25℃以下では安定なPSB4液滴が形成され,昇温するとPSB4液滴界面に付着したPPrOx液滴が発生し,最終的にPSB4液滴内部に取り込まれる現象を発見しました。この水溶液温度に応じた多成分複合液滴の形態変化は,PPrOxの感温性凝集により発生する液滴の界面張力により説明されました。体温付近のわずかな温度変化により複合液滴の形態や配置が変化する新たな分子集合体であり,環境に応じて内包分子の放出や分子の隔離を発動する多相分画場として薬物担体や分子抽出システムとしての応用が期待されます。本研究は,JSPS科研費 基盤研究B 「水性ミクロ相分離二相系高分子集積体の創成」 JP 22H02147JSPS科研費 挑戦的研究(萌芽) 「親水性高分子の水中相分離と親水性/親水性分画場への分子内包」 JP 24K21797の助成を受けたものです。(受賞対象発表件数:46件,受賞者数:5名)

 

檜垣研究室:https://yuhigakki.wixsite.com/mysite

 

関連論文

1 Yuji Higaki,* Yasuhiro Eguchi, Takumi Masuda, Yuri Mitsunobu

  "Lyotropic Microphase Separation in Aqueous Solutions of Double Sulfobetaine Diblock

  Copolymers Induced by Charge Separation Length Mismatch"

  Macromolecules, 58(15), 8327-8334 (2025) DOI: 10.1021/acs.macromol.5c01463

2 Yuji Higaki,* Takumi Masuda, Shohei Shiomoto, Yukiko Tanaka, Hisao Kiuchi, Yoshihisa

  Harada, Masaru Tanaka

  "Pronounced Cold Crystallization and Hydrogen Bonding Distortion of Water in

  Microphases of Double Zwitterionic Block Copolymer Aqueous Solutions"

  Langmuir, 40, 19612-19618 (2024) DOI: 10.1021/acs.langmuir.4c02254

3 Yuji Higaki,* Takumi Masuda, Mai Nakamura, Masaya Takahashi

  "Cononsolvency-Induced Microphase Separation of Double Hydrophilic Poly(2-ethyl-2-

  oxazoline)-Polycarboxybetaine Diblock Copolymers in Water-Ethanol Mixtures"

  Macromolecules, 56(16), 6208-6216 (2023) DOI: 10.1021/acs.macromol.3c00696

 

繊維学会夏季セミナー受賞者情報:
 https://www.fiber.or.jp/jpn/events/2025/summer/awards_poster.pdf

   賞状.jpg      木村さん.jpeg

        賞状       実行委員長の氏家誠司教授(左)と木村圭吾さん(右)

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