学部4年生秋山倫菜さん(檜垣研究室)が令和7年度九州地区高分子若手研究会・冬の講演会で「高分子学会九州支部若手会最優秀ポスター賞」を受賞しました。
本学理工学部 共創理工学科 応用化学コース 4年 秋山倫菜さん(檜垣研究室)が令和7年度九州地区高分子若手研究会・冬の講演会で「高分子学会九州支部若手会最優秀ポスター賞」を受賞しました。
〇発表題目:スルホベタインN-アルキル鎖長に応じた静電ポテンシャルと嵩高性により変調されるポリスルホベタインの相分離挙動
〇発表日時:2025年 11月 13日
〇著 者:秋山倫菜、光延侑莉、檜垣勇次
細胞質において天然変性タンパク質や核酸などの生体高分子が凝集して形成される液滴は、細胞内を区画化する分子機構として注目されており、遺伝子発現・シグナル伝達といった細胞内制御から、神経性疾患やウイルス増殖経路に至るまで、さまざまな生命プロセスへの関与が示されています。この生命分子システムの本質を把握し、それを模倣することで革新的分子機能の実現が見込まれます。本研究室では、双性イオン高分子のみで構成される両親水性ブロック共重合体が濃厚水溶液において相分離して格子状秩序構造を形成し、高分子濃度に応じて構造転移する現象を発見しています(Macromol. Chem. Phys., 2022, 224, 2200416; Macromol. Chem. Phys., 2021, 222, 2000377)。この高分子集合体は、濃度が異なる複数の高分子水溶液がナノメートルスケールで分画され周期的に配置された分子集合体であり、親水性分画場を内包する複雑流体として関心を集めています。本研究では、双性イオンに含まれる第四級アンモニウムカチオンのアルキル鎖長を変更した新規両双性イオンブロック共重合体を合成し、その濃厚水溶液で形成されるミクロ相分離構造を放射光小角X線散乱(SAXS)測定で解析することで、窒素への電子供与性の増幅による静電ポテンシャルの低下と第四級アンモニウムカチオン近傍の立体的嵩高性の増大がミクロ相分離秩序構造の形成と安定性に及ぼす効果を研究しました。その結果、N-アルキル鎖長の増大により格子状秩序構造が形成される高分子濃度域が高濃度側にシフトし、温度に応じた格子構造変化が抑制される傾向を見出しました。双性イオン間相互作用エネルギーの低減と、静電相互作用/van der Waals相互作用/疎水性相互作用の相対的寄与の変調に起因すると考えられます。すなわち、双性イオン高分子の静電凝集相の状態を双性イオンの設計により制御することで水性ミクロ相分離二相系における格子状秩序構造のモルフォロジーや熱安定性の制御が実現されており、当研究室で初めて発見した新たな高分子集合体の実態に迫る研究成果です。本研究は、科学研究費助成事業(科研費)基盤研究B「水性ミクロ相分離二相系高分子集積体の創成」 JP22H02147、挑戦的研究(萌芽)「親水性高分子の水中相分離と親水性/親水性分画場への分子内包」、国立大学法人大分大学学長戦略経費の助成を受けたものです。(受賞対象発表件数:24件、受賞者数:1名)
【檜垣研究室】https://yuhigakki.wixsite.com/mysite
【令和7年度九州地区高分子若手研究会・冬の講演会受賞者リスト】
https://spsj.or.jp/branch/kyushu/Awards.html
【学術論文のリンク】
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/macp.202200416
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1002/macp.202000377

秋山倫菜さんと檜垣勇次准教授 賞状
